Quantcast
Channel: VIDEX.JP ミステリー の新着情報
Viewing all articles
Browse latest Browse all 694

霧と影

$
0
0
毎朝新聞記者小宮が、石川県能登に飛んだのは、教員過失死の記事の不審からだった。教員笠原が崖の下で水死体で発見された一件だ。小宮は、笠原とその妻雪子と無二の親友であり、笠原が高所恐怖症であり、かつユリ子という可愛い子供までいる円満な家庭にあったからだ。小宮は事件当日の笠原の様子を聞き込む。その日笠原は、観音崖の奥の猿谷郷に住む長期欠席児童宇田清の家庭訪問に出掛けていた。また、猿谷郷が本田本家と分家、矢田本家と分家の戸数僅か4戸の隔絶された部落であり、郷土史の研究を行う笠原は、この猿谷郷に興味を示していた。そんな中、東京から真正興信所の井関と名乗る男が、宇田清の叔父・宇田甚平の身許調査に来たことを知る。宇田甚平という名を聞いて、小宮は愕然とする。以前、小宮は東京の宇田建設社長の甚平の調査を笠原から依頼されたいた。小宮は本社からの助っ人として地方通信局の板根という青年の訪問を受ける。土地に詳しい板根は、事件当日笠原が富山の薬売りらしい男と共に猿谷郷に向かったという情報を得てくる。その薬売りの名は、松本貞次郎という名で、もう一人の連れと旅館に一泊し、東京へ旅立った事が判明する。そして、小宮と板根は、宇田本家を探り、そこで両国の花火の空箱を見つける。また、宇田清の父参平が精神病のため土蔵に幽閉されている事実を掴む。一旦、東京に戻った小宮は、花火の空箱からその購入者の正体を求め、また甚平を調査していた興信所の井関の正体を突き止めるべく、調査を開始する。真正興信所には、井関という者はおらず、その代わりに、最近このビルを舞台に大規模な手形詐欺事件があったことを知る。洋服会社カミング洋行の石田社長と現代商事の野見山、二階堂と名乗る男との取引で、石田は6千万円もの不渡手形を掴まされたのだ。この取引を仲介したのは、なんと甚平だった。さて、花火の空箱から杉山怜子という女が浮かび上がる。怜子の夫は富山の薬売りの松本であり、怜子の妹矢田すぎは詐欺のあった堀留ビルに勤めていた。また、井関という謎の男が怜子を追っていることを知る。そんな折、松本が宇田建設の工事現場で、コンクリートの下敷きになって死んだ。その死体を確認したカミング洋行の石田は、彼こそは手形詐欺の野見山であると証言する。直ちに、東京本社から板根通信員の許へ調査の指示が飛ぶ。宇田本家の嫁はなには二人の妹がおり、その一人が怜子らしかった。6千万円の手形詐欺は、猿谷郷に繋がり、さらに笠原の死へと導かれていく。板根は猿谷郷へと潜入する。その際、参平が幽閉されているという土蔵で見たのは、なんと汚職容疑で逃走中の元国務大臣豪田とその部下で手形詐欺の犯人の一人である二階堂の姿だった。元国務大臣と宇田甚平一味の関係とは?はたまた、彼らを追う井関という謎の男の正体とは?小宮、そして板根の胸に、黒い疑惑の影が霧のように拡がっていく…。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 694

Trending Articles